Case Study 導入事例

クライアントの声

株式会社沖縄TLO様の場合

アソシエイト 與儀(よぎ)勝利様
経営企画室 業務主任 渡名喜(となき)裕子様
経営企画室 産業政策研究室 室長 大井佐和子様

テーマ 健康食品産業の「元気復活事業」プロジェクト
対象 沖縄県内の健康食品産業に携わる企業

成功の鍵は「ビジネスモデル」の差別化だった!

まずは、沖縄TLOについて教えてください。

渡名喜様
TLOとは、Technology Licensing Organization(技術移転機関)の略称です。知財化された大学の研究成果などを産業界へ移転する産と学の「仲介役」の役割を果たす組織です。大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に戻すことにより研究資金を生み出し、大学の研究の更なる活性化をもたらすという「知的創造サイクル」の原動力として産学連携の中核をなす組織です。全国各地にTLO法に基づいた「承認TLO」が活動していますが、それらとは少し性質が異なる組織として、平成18年3月に「株式会社沖縄TLO」として設立しています。大学ごとに設立されるケースが多いのですが、弊社は特定の大学に特化しない組織です。そういう意味でも他のTLOとは少し性質が異なっています。
弊社では、琉球大学だけでなく他の大学や研究機関も含めた「沖縄における大学等の知」を沖縄地域の重要な経営資源として認識しています。そして、これらの「知」をイノベーティブに「地域の経済活動」に導入することで、「産業(事業)の知識集約化と、商品・サービスの高度化、高付加価値化による自立的産業発展」に資する機能の整備および事業活動の展開をはかっています。
株式会社であり、民間の組織ですが、産業界だけでなく自治体や大学との強い連携があります。

その沖縄TLOが沖縄県から受託して行っている『健康食品産業元気復活支援事業』について、どんなプロジェクトなのか、そもそもの発端を教えてください。

與儀様
以前、沖縄県産の健康食品のブームがあり、ピーク時の平成16年には200億円くらいの市場規模がありました。ところが、平成16年を境に減少傾向が続き、平成20年には約98億円。市場として、半分以下の規模になってしまいました。
これは、沖縄県特有の素材を活用した健康食品産業を観光産業とならぶ重点産業と位置づけている沖縄県にとっても由々しき事態だったため、平成23年度に県内の健康食品産業の振興調査が実施されました。
その調査の中で見えてきたのが、ビジネスモデルによる差別化です。全体的な市場の落ち込みはあるものの、その中でも着実に成長している県内の企業もいくつもありました。そのような、いわゆる「成功事例」を調査、分析したところ、どうやら商品力だけでなく、ビジネスモデルで差別化している(できている)ことが一つの要因であることが見えてきました。新規顧客を獲得するための工夫だったり、リピートしていただき長く購入してもらうための工夫だったり、質のよい原料を安定的に調達する仕組みだったり。商品自体がいいのはもちろんですが、「つくる仕組み」や「売る仕組み」の部分での差別化です。
そこで、商品力による差別化に加えて、ビジネスモデルでの差別化が重要であることを県内の健康食品産業に広めていく必要があるという結論に至ったことが「健康食品産業元気復活支援事業」が始まったきっかけです。

もっと早く出会いたかった「ビジネスモデル・ジェネレーション」

そんななかで、ビジネスモデルの講演やセミナーを弊社にご依頼くださったのはどんなきっかけがあったのでしょうか。

與儀様
書店で小山先生が翻訳された『ビジネスモデル・ジェネレーション』に出会ったことです。ちょうど、調査報告書をまとめている頃です。そのころ、調査結果を踏まえた「沖縄型ビジネスモデル」を検討して、ビジネスシステムや経営学の本を参考にしながら、業界の皆さんに伝わりやすいように整理するために四苦八苦していました。たまたま書店で見つけた小山先生の本を見て、「あ、この考え方でまとめていったらわかりやすいのではないか」と思い、いろいろと勉強させていただきました。
そこからの流れもあり、プロジェクトの1年目に小山先生に健康食品関連の企業の方々を対象としたオープンセミナーをお願いして、2年目からは委員もお願いしています。とても明快でわかりやすいセミナーや様々な助言等をいただき、県内企業の間でもビジネスモデル構築についての理解が深まりつつあります。

シンプルなフレームとわかりやすい言葉がいい「ビジネスモデルキャンバス」

実際にビジネスモデルキャンバスを使ってみていかがですか?

大井様
ワークを通してビジネスモデルの考え方を理解することはもちろん、みなさんの士気を高めたりすることにも役立っています。シンプルでわかりやすくて、さらに全体を網羅して事業を見つめなおすことができる非常に使いやすいフレームだと認識しています。
首都圏の大企業がこういう取り組みをするのと、沖縄みたいな地方都市で小さな企業が地域の素材を使ってやる事業では、自ずとその取り組み方に違いがあると思っています。加えて、沖縄には、沖縄独自の特性もあります。だから、沖縄の企業は、沖縄の企業が成功するやり方を、みんなで考えていかなくてはならないと思うんです。
ビジネスモデルキャンバスを使って、企業のみなさんと一緒に議論をしていくなかで、お互いが考えていることを見える化して、沖縄ならではの取り組み、様々な条件をクリアにして、実現可能性の高い計画をつくっていくことが重要だと考えています。ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを考えていくうえで必要な要素を網羅的に可視化してくれるので、企業の方々が自分たちを見つめなおすためのツールとしてもとても有用です。
また『ビジネスモデル・ジェネレーション』の本はイラストがかわいくて、目を引きますよね。行政の支援事業という特性上、これまで使用してきた書籍や資料等は、文字が多く固いイメージのものが多かったのですが、POPな感じのこの書籍がとっつきやすかったのも良かったと思います。
與儀様
フレーム自体もシンプルなので、県内の企業の皆さんも「やってみようか」という気持ちになりやすいみたいです。使われている言葉、要素もイメージしやすいですし、9つの項目がつながっているかどうかもわかりやすい。イメージを共有しやすいですよね。

一緒に勉強して一緒に戦っている企業さんが成長する喜び

実際にやってみてどんな効果がありましたか?

大井様
今年は、プロジェクトの3年目にあたりますが、1年目と比べて、「共通言語としてビジネスモデルキャンバスを使う」ことが浸透した感があります。
我々は、企業の方々とチームを作り、事業を通して、一緒に学び、考え抜き、方法論を共有することが重要だと考えています。一緒に思考するツールを共有できたことで様々な問い合わせや相談などに対する回答や助言が、キャンパスを使うことによって、伝わりやすくなっています。
実際、企業のみなさんから提出される書類が1年目より2年目のほうが格段に良くなっています。明らかにビジネスモデルについての理解が深まっているんです。
たとえば、ある企業では、自分たちでビジネスモデルキャンバスを書いて、どんな価値を提案するか、だれに届けるのか、一生懸命考えて申請書類を作成しましました。残念ながらご一緒に仕事をする機会にはつながらなかったのですが、そのキャンバスで検討した内容をもとに実際にアクションを起こしています。伝えなくてはならない価値が明確になったり、まずは何をすべきかが明確になったことで、この会社は情報発信のための拠点をつくり活動を始めています。
このように、事業提案の時だけ使うのではなくて、実際のビジネスに活用する場面が出てきた実例が出てくると、私達もとても嬉しくなります。
渡名喜様
助成金の申請書類を作成するにあたって、「今後どうしよう」「どうビジネスモデルを構築しよう」と考え抜いたそのことが事業に役立っている。そのことが、私た ちにとっても嬉しいことです。助成金ありきではなく、自分たちが考えたことを自分たちの資金で、自分たちの身の丈にあった方法で進めているところもあります。
與儀様
われわれの当初の目的であった「ビジネスモデルによる差別化」が、この事業の枠を超えて着実に広がっていっていると実感しています。
実は、社内でも活用させてもらっています。弊社では、研究開発事業の支援を担当している者もいますが、彼らがビジネスモデルを考えなくてもいいかというとそうではないですよね。でも、日々の業務に追われるとどうしても自分たちの業務のことしか考えられなくなって、自分の担当業務以外のことが目に入らなくなってしまう。そんなとき、ホワイトボードにキャンバスが貼ってあると、ふと目についた時に、「あの四角ってなんなの?」と関心を持ってもらえます。比較的シンプルに説明できるフレームなので、社内の認識も広がっていき、他のメンバーのビジネスモデルに対する意識も徐々に変わってきました。

「いいモノだから売れるとは限らない」
ビジネスモデルキャンバスでわかること

試作品をたくさん作るというのは、目的のひとつでした。たくさん具体的なアイデアが出たからこそ新商品が3つ生まれたのですが、まとめるチームリーダーは大変でしたね。

大井様
昨日の講義で小山先生がお話された、テクノロジーとマーケット。製造業は、どうしてもテクノロジーにフォーカスしてしまうんですよね。助成金も、テクノロジー重視で採択されていました。完全にプロダクトアウトです。
「モノ」の素晴らしさを語る。でも、「だれに」売るのかわからない。これだとなかなか事業が成り立ちませんよね。支援する立ち場のわれわれも、それをもっと理解しないといけない。私達がこの事業で応援してきた健康食品関連の企業の方々の間では、商品開発や研究開発の計画を立てる際にも、ビジネスモデルの全体像を考えることが一定レベルでは浸透しているので、別の事業に提案するときも、このキャンバスのイメージで考える癖が自然についてきている企業さんもいます。

セミナー講師だけでなく『評価委員』としても

セミナーだけでなく、委員としても参画させていただき、小山自身もいろんな課題を発見しました。ありがとうございました。

大井様
「ビジネスモデルによる差別化」が、「健康食品産業元気復活支援事業」の一つの「キモ」ですから、小山先生の専門家の立場からの指摘や、挙げていただく具体的な事例は本当にありがたいです。われわれでは見落としていたり、伝えきれなかったり、考えも及ばないこともありますから、とても助かっています。
特に今回の事業では、「フレッシュな先生」で構成したいという思いがスタート当初からありました。支援対象の企業だけでなく、我々にとってもチャレンジングな取り組みだと思っていたので、一緒になって取り組んでくださる先生方に指導をお願いしています。
沖縄は、地理的にも歴史的にも、資源も気候も、他の都道府県とは違います。気質も少し違うと思います。中小企業の事情や沖縄独自の課題も理解したうえで、企業経営の課題だけでなく、いろいろ絡み合っている複雑な問題も含めて十分に理解したうえでご指導いただきたいと考えていたので、とても感謝しています。

他の産業分野にも展開したい

今年(2014年)でプロジェクトも一区切りですね。今後はどんな展開を考えていますか?

大井様
1990年代、ITが普及するなかで、一度ビジネスモデルという言葉がもてはやされたことがあったと思いますが、沖縄では現在が第二次ビジネスモデルブーム。去年、今年と取り組みが増えました。 どういうきっかけかわかりませんが、少しでも、われわれが取り組んだことが効果として表れているとすると、とても喜ばしいことです。また、「ビジネスモデルによる差別化」を考えることが一つのムーブメントとなることは、沖縄の産業にとってはうれしいことです。
これまで沖縄では、いろんな商品やサービスが、『ちゅらさん』に代表される「沖縄ブーム」のかなでの便乗売れしてたと思います。商品やサービスの魅力やクオリティとは別で、沖縄っぽいというだけで売れているものが沢山あったと思うのです。「ビジネスモデルによる差別化」という考え方は、その現実をを見つめ直すきっかけになったとと思っています。ビジネスモデルは重要な要素であることを伝え続けていきたいですし、もっともっとビジネスモデルの考え方が浸透していったらいいと思っています。
渡名喜様
沖縄では観光産業も重要です。観光は、消費単価がすごく落ちています。よいときは客単価10万円弱だったのが、今は6万円ほど。「働けど働けど、……」という状態です。ぜひ、観光産業にも応用していきたいと思っています。
さらに、今回の事業でご指導いただいた他の先生方の方法論やツール、フレームなどと、上手に使い分けしたり、ミックスさせたりして検証を重ねるなど、クオリティの高い議論で、沖縄の産業活性を支援したいと思います。
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